2020年ビジョン

2−c)自立、共生から創造へ

 自他ともに共生できる、持続可能な社会を築いていく為に、自らの存在さえも失いかねない現在のような奔放な自由さではなく、自立、共生の心を持って創造的社会を築く必要があります。

 21世紀、日本のグローバル化は避けられません。他国との交流がより盛んになり、人の往来が活発になってきています。文化的な鎖国をしいて、金だけ出すという姿勢は通用しなくなってきています。「国際化」だとか「相互扶助」などという言葉も通用しなくなるでしょう。「共に生きる」。21世紀日本の姿は、この言葉に尽きるのではないでしょうか。共栄のみならず、共苦、共楽、共貧、共闘... つまりはそれが共生ということになります。
 今の状況を私たちは、人類全体の危機的状態にもかかわらず、それを柔らかなオブラートに包み、目をそらしているのではないでしょうか。
 70年代から繰り返し指摘されている環境問題は、もうすでに不可逆的な状況に陥っています。慢性的な公害は、先進工業国から発生しましたが、いまでは途上国の隅々にまで行き渡ってしまいました。
 世界の森林は減少の一途をたどり、とりわけ熱帯林の喪失は地球の生物多様性を失わせつつあります。淡水が枯渇し、農業用水の確保が困難になってきていて、世界の耕作可能な土地は確実に減少しています。一方で、海の汚染も進行し、世界の漁獲量はすでに頭打ちとなっています。また、遠からぬ将来、温室効果により地球の気温が1〜2度上昇し、大洋の水位が上昇することも分かっています。そして、これによる水没や砂漠化、異常気象などが危惧されています。とりわけ深刻なのは、信じがたいほどの世界人口の急増です。この圧力は、世界的な食糧危機をもたらす可能性を避けがたいものにしています。
 事実、これらの危機的状況は、世界中の市民が知るところとなっています。しかし同時に、誰もが現実的な問題として受け止めようとはしていません。25年後には、世界人口が現在の60億人から、100億人にまで増大しうるということを知りながら、私たちはそれに蓋をして「何かのたとえ話」のように考えています。
 これは、死に直面したひとりの末期患者が最初に見せる姿勢に似ているかもしれません。深刻な病いであることを知ったとき、ほとんどの患者は「いや、私のことじゃない。そんなことがあるはずない」と考えます。検査結果に間違いがあるのではないか。医者が煙草をやめるように脅かしているだけじゃないか。そう自分に言い聞かせようとします。ときには、楽観的な診断を下してくれる医師を探し歩く患者もいます。人類が病み、地球が蝕まれているという診断への私たちの姿勢は、まさにこうした患者たちに酷似しているのではないでしょうか。
 多くの途上国で目撃される貧困や飢餓、あるいは地域紛争について、いったい私たちは、「自分自身の体の一部が病みつつあるのだ」というように受け止めることができるでしょうか。
このまま環境が汚染されつづけ、人口が増大するなら、おそらく21世紀初頭には、さらなる地域紛争が頻発してゆくでしょう。そして、それが世界化する可能性も否めません。

 そろそろ、私たちは自分が病んでいることを認めてもよいのではないでしょうか。そして、この病いに闘えるだけの体力が残っているうちに、治療に乗り出さなければ、それこそ現実的な意味で「手遅れ」になりかねないことを認めるべきなのです。

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